三国同盟秘史

リッベントロップ(第7話)

三国同盟

全10話の三国同盟秘史の中核を占めるこの第7話。当研究所はあくまでも世界史研究所なのに敢えて、この同盟を最初の題材に選んだのは日本人の気分に流されやすい気質、既成事実に流されやすいこと、硬直的人事などが典型的に表れている条約だからである。この頃の日本の首脳陣による会議の議事録を見るとドイツが勝つことが大前提として全てが議論されている。ドイツは、情報を全て宣伝省とナチス党で見事に統制し、公式発表だけを見ていたら事実とは全く違うことを本国に送ることになる。ドイツの公務員は外国人との付き合いを極度に制限されていたし、誰であれ少し外出しただけでも監視されることになった。これはという人物には徹底的な接待がなされ、特に日本の陸軍関係者は、接待上手で外務省の儀典長になった最長身のデルンベルクたちの対象になった。陸軍関係者が海軍に比べ非常にモテたらしいがこれに関係するのかもしれない。大してドイツ贔屓でなかったのがドイツに来てすっかりドイツ贔屓になった例はあ少なからずあった。日独伊三国同盟には、虚構や虚栄や空虚や虚実など虚という文字が本の題名に目立つが、こういう極端で目立つし分かりやすすぎる言葉を使うことこそ、まさに日本人的気質を最も典型的に表していると言えよう。戦後の東京裁判で、この日独伊三国同盟関連の戦犯の松岡洋右、大島浩、白鳥敏夫は他の戦犯と別格扱いとされ、戦後明るみに出たナチスの蛮行のこともあり、ニュルンベルク裁判における親衛隊のカルテンブルンナーのようになってしまった。果たしてこの3人だけが悪者なのか?この同盟を見ていくと、どうやら同床異夢という言葉がピッタリであろう。三国それぞれがが勝手に他の二国を利用したつもりが、自分も利用されている。大戦直前期に駐英大使だった戦後の首相になる吉田茂は、自分の周りの秀才とされる参謀本部の軍人や外交官たちのドイツ頼みの荒唐無稽な話に『そんな話は本郷や牛飯屋でやる話だ』と一喝し説得しにベルリンから来た大島浩駐独大使も論争に負けてしょんぼりしていたようだ。他にも海軍の米内光政や山本五十六、外務省の東郷茂徳など気分や祭りに影響されない人物はいたが少なすぎた。第7話は、大島浩が独ソ不可侵条約の責任を取って帰国するところから、日独伊三国同盟調印式とちょうど重なった皇紀2600年の祭典までを扱うが、政治のことを今でもまつりごとと言うが、この気分と祭に高い代償を日本は支払うことになった………

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  • 既存の組織ではやりにくい横断的な試みができるところ。最初の試みである三国同盟秘史もドイツだけでなくイタリア、日本にもかなり言及。次の試みの慶大専科も世界史と英語が完全に一体化しています。また、現在準備中の孔明コンテストに至っては、外国語も英語だけではないし、勉強面でも理数も扱うし、スポーツもピアノも課題に入ります。